クエン酸生成能に優れている麹菌であるAspergillus luchuensisには、黒色になる黒麹と、突然変異によって色素合成能を欠失した白麹があり、どちらも広く焼酎醸造に使われています。これらのゲノム情報の違いについて、これまでもご協力いただいている種麹屋の皆様から自社でお持ちの黒麹と白麹の実用菌株をご提供いただき、網羅的なゲノム比較を行った論文がFungal Genetics and Biology誌に掲載されました。ご協力いただきました種麹屋の皆様、ありがとうございました。

過去にも黒麹と研究用白麹の遺伝的特徴の違いについては研究が行われていますが、本研究はさらに株数を増やすことで、黒麹と白麹の間に共通して見られる遺伝的特徴を明らかにしました。その結果、研究用白麹と実用白麹が持つ変異の中で共通して黒麹と異なっている変異は7遺伝子あり、その中には過去の研究で明らかにされた色素合成遺伝子が含まれることがわかりました。

一方で、研究用白麹と実用白麹の間には遺伝的特徴に明確な違いがありました。実用白麹には共通した追加的な変異が多数あることがわかり、その中にイソクエン酸リアーゼが含まれていました。実際に酢酸を単一炭素源として培養を行うと、実用白麹はすべて生育ができなくなっており、機能を失っていることがわかりました。今後もこのテーマを含め、麹菌を題材とした研究を進めていく予定です。

研究の詳細は東京工業大学プレスリリースぐるなびニュース、および国立遺伝学研究所プレスリリースにてご覧になれます。

論文はこちら→[Fungal Genetics and Biology]