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滋賀県の食文化

滋賀県(長浜藩)の食文化

調査班:福田 紗也香、種村 亮太(iGem Nagahama)  調査日:2017年9月13日

目次

1. 風土・歴史

2. 調査した郷土食

  鮒寿司

3. 最後に

1. 風土・歴史                 次へ 目次

 『魚冶 鮒寿しとは』によると、現在のように、整備されていなかったかつての琵琶湖周辺の田んぼは、梅雨時の大雨で水量が増えると川も湖も田んぼも一体となり、そこに溯上したニゴロブナにとって絶好の産卵地となっていたそうです。当時を振り返ると、あまりの鮒の量に水面が盛り上がって見えたというから驚きです。そして、付近の人々は自然の恵みとして、そのニゴロブナを大量に捕獲しました。一時期に大量に獲れても全て新鮮な内に食すことはできません。そこで、ニゴロブナを保存するための方法として編み出され、次第に定着していったのが、発酵食品である「鮒寿司」だと言われています。冷蔵庫も無かった時代に、貴重な食料を長く保存するための人々の知恵だったのです。

 『村井水産 鮒ずしの歴史』によると、平安時代の『延喜式』によると、近江国筑摩厨(滋賀県米原市)から「鮨ずし」が朝廷に貢納されていることから、少なくとも「鮒ずしの歴史」は文献により確認できる範囲では、約1200年の歴史があることになります。一説では、安土に城を築いた織田信長が徳川家康をもてなした時にも、鮒ずしが出されたと言われており、歴史の名将たちも鮒ずしを食べていたといわれています。

(福田 紗也香)

2. 調査した郷土食            前へ  次へ 目次

 鮒寿司

 鮒寿司は、毎年2月から5月に漁獲される二ゴロブナを塩漬けにして、その鮒を焚き上げたうるち米と一緒に約半年~一年発酵・熟成させて作ります。味は、酸味の強い濃厚なチーズのような味がします。発酵食品は、滋養強壮に良く、整腸作用があります。『住茂登店 鮒寿司』によると、生フナに比べてたんぱく質が多く、ビタミンB1がうなぎ並みに豊富であり、特にカルシウムは生フナの時より10倍も増えるそうです。これは発酵によって、骨が柔らかくなるので、骨ごと食べられるためカルシウム摂取量が増えるからです。

 株式会社魚三では、3月から5月の頃に摂れる子持ちのニゴロブナから鱗、えら、内臓を取り除き、3ヶ月間塩漬けします。余分な塩を流水で洗い流して、三日間天日干しします(図1)。30 kgの漬物樽に漬ける場合、1斗5升の冷ましたご飯(一年前のこしひかり)に塩を振り、天日干しを終えたニゴロブナのエラにご飯を詰め込んで、予めご飯を敷き詰めた樽の中に重ならない様に敷き詰めます(図2)。そして、ニゴロブナが隠れる程度にご飯を載せます。この工程を何度も繰り返し、最終的には何層にも二ゴロブナとご飯の層を重ねます。最後にはご飯が上になるようにし、ビニールでラップして、しっかり押さえます。樽の内周に沿わせ平縄を置き、内蓋を載せてから、70~80 kg重石を乗せ半年~一年間熟成させます(図3)。

図1  二ゴロブナを天日干しにする

図2  漬物樽の底にご飯を敷き詰めてから、ご飯を詰めた
ニゴロブナを重ならないように樽の中へ入れる

図3  最後にはご飯が上になるようにし、ビニールでラップして、
しっかり押さえる。樽の内周に沿わせ平縄を置き、内蓋を
載せてから、70~80 kgの重石を乗せ半年から一年間熟成させる

(福田 紗也香)

<調査協力>

株式会社魚三
滋賀県長浜市元浜町12-7
http://www.uosan.net/ 

 

 

 

 

 郷土料理店 住茂登では、4月から6月に琵琶湖で獲れた天然の二ゴロブナ(メス、子持ち)を使って鮒寿司を作ります。6月に鮒の鱗、えら、内臓、目玉を取り除いてから、えらに塩を詰め込んで塩漬けし、陰干しします。そして7月にはえらに米を詰め込んだ鮒(図1)を木桶で米漬けます。このとき米は近江米のコシヒカリを使用し、桶は木製の桶を使用します。下図2のように米の上に鮒を互い違いに並べ、またその上に米を敷き詰める工程を繰り返します(図3)。そして蓋をして、その上に重石を載せ、桶を密閉します。その桶を床に接しないように蔵で保管します(図4)。この状態で約6か月間鮒を発酵させて作ります。

図1 えらに米を詰め込む   

図2 互い違いに鮒を並べる

 

図3 桶に並べた鮒の上に米を敷き詰める

図4 桶を床に接しないように保管

(種村 亮太)

 

<調査協力>

住茂登
滋賀県長浜市大宮町10-1
http://sumimoto-kamo.com/

 

 

 

 

3. 最後に                  前へ  目次

  先祖代々受け継がれてきた技が、今もなお昔と変わらない姿で、丁寧に行われていることに驚き、感動しました。これは、伝統を大切にし、守ろうとする強い思いの賜物なのだと感じました。変わっていないということは、昔にタイムスリップして、取材をしたのと同じであるということです。そのように考えると、とても貴重な体験をさせていただいたのだと感謝しています。
 この記事を通して多くの人に、鮒寿司の歴史の深さと発酵食品としての良さを知る機会になれば幸いです。
 鮒寿司のお店を紹介してくださった、長浜商工会の北川様、鮒寿司調査の取材を快く受けてくださった、株式会社魚三の皆様、住茂登の皆様、本当にありがとうございました。(福田 紗也香)

 鮒寿司は、鮒の運動量、鮒の生息地、鮒を漬ける米、漬ける場所、漬ける桶、等々によって味が変わると聞いてとても興味深かったです。また、鮒寿司を食べたら病気が治ったという話も聞けたので解明したいです。この度は貴重な体験をさせていただき感謝しています。(種村 亮太)

参考資料

○ 村井水産 鮒ずしの歴史 http://muraisuisan.com/history/

○ 長浜魚三~びわ湖の幸~創業百余年伝統の味を守り続けて http://www.uosan.net/

○ 魚冶 鮒寿しとは http://uoji.co.jp/funazushi

○ 〔鴨料理・うなぎ・郷土料理〕長浜住茂登すみもと  http://sumimoto-kamo.com/hinazusi.html

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