京都の伝統的な発酵漬物であるしば漬を題材とした、発酵微生物群集に関する論文がMicrobiology Spectrum誌に掲載されることとなりました。
しば漬のサンプルをご提供くださいましたメーカーのみなさま、ありがとうございました。
論文では、製造過程における微生物群集を解析した上で、初期菌叢を人工的に構築し、しば漬の製造過程で見られた変化を無菌ナスジュースを発酵させても再現できるかを評価しました。さらに発酵によって生成される乳酸やアミノ酸などの成分の変化なども比較しています。
伝統的な発酵漬物は原料や環境に由来する微生物を上手に生かしながら発酵させる(「自発的発酵」といいます)ので、微生物群集が同じになるとは限らず、実際にばらつきがあります。
そのため、自発的発酵によってどの成分がどの微生物の働きによってできるのかを科学的に再現性高く検証することは困難でした。
そこで、主な発酵微生物だけでなく、途中でいなくなってしまう微生物も含めた微生物群集を人工的に構築し、無菌野菜ジュースで発酵させる、という取り組みを行いました。
これによって自発的発酵で見られる変化のメカニズムの詳細を調べることができました。
このアプローチは「追跡可能な微生物群集 (Trackable Microbiota)」を実践したもので、微生物群集の生態学的理解を深めるために有効だと考えられています。
このアプローチを、自発的発酵で製造される他の発酵食品に応用することで、安定した「自発的発酵」を実現することができると期待できます。
研究の詳細は東京工業大学プレスリリース、およびぐるなびニュースリリースでもご確認いただけます。
論文はこちら[Microbiology Spectrum]