京都府(淀藩・峰山藩)の食文化
調査班:愛甲、小倉、小柳 調査日:2017年9月12 – 13日
1. 風土・歴史 次へ 目次
1.1 京都市(淀藩)
1.2 京丹後市(峰山藩)
2. 調査した郷土食
今回私たちは、京都市では日本酒、白味噌、京漬物(千枚漬・すぐき漬・しば漬)を、京丹後市では乗原こんにゃくとばら寿司を調査しました。
2.1. 日本酒 前へ 次へ 目次
歴史的に見ると、平安時代は役所で酒が造られましたが、室町時代に酒税を取る目的で室町幕府が庶民に酒造りを許可したことで、日本酒の製造が一気に広まりました。江戸時代に伊丹や灘の酒の人気が高く、低迷した時期もありましたが、明治時代以降、伏見は醸造技術開発の先進地域として、四段仕込み、速醸酒母、四季醸造などの技術を早くから導入し発展しました。また、明治時代から続く『伏見酒造組合』や『伏見醸友会』といった組織があり、酒蔵同士のつながりが強く、醸造技術向上のための取り組みが活発に行われています。伏見では多くの流派の杜氏が競い合い高めあってきたので、蔵ごとに個性があり、同じ地域でありながら様々な味の日本酒が楽しめます。
<調査協力>
黄桜株式会社
京都府京都市伏見区横大路下三栖梶原町53
http://www.kizakura.co.jp/
2.2. 西京白味噌 前へ 次へ 目次
京都市の食品の代表の一つともいえる白味噌ですが、一番の特徴はその白さと甘さにあります。甘みは日本の国菌とも呼ばれる麹菌(アスペルギルス オリゼー)が米に含まれるでんぷんをブトウ糖に分解することによってもたらされています。また麹菌は原料に含まれている成分を人間の体に吸収しやすい形に変えており、栄養の面でも非常に優れた食品です。左の写真は代表的な白味噌「西京白味噌」です。
取材させていただいた本田味噌本店は江戸時代後期に創業しました。創業当時の味噌に関する資料や、味噌に関係する道具などが数多く残っています(下写真)。
<調査協力>
株式会社本田味噌本店
京都府京都市上京区室町通一条上ル小島町558
http://www.honda-miso.co.jp/
2.3. 京漬物 前へ 次へ 目次
京都では、千枚漬、すぐき漬、しば漬が三大漬物と呼ばれ、それぞれ独自の歴史を持っており、京都の文化と非常に深く密接してきました。それぞれの特徴として以下のようなものが挙げられます。
1)千枚漬
千枚漬は、薄切りにした聖護院かぶらと北海道産昆布、みりん、お酢などとともに漬けたものです。最初に塩のみで漬け、次に調味料を加えて漬けるというように、二段階で漬けています。180年前、孝明天皇の宮中に仕えていた料理人が、考案したと言われています。名前の由来は、聖護院かぶらを千枚と言えるくらい、薄く切って作るところからであると言われています。写真は千枚漬の原料となる聖護院かぶらで、バレーボールくらいの大きさがあり、かなりずっしりしています。
2)すぐき漬
すぐき漬の起源は、すぐき菜(すぐきかぶら)が上賀茂で桃山時代に社家と呼ばれる上賀茂神社に仕える氏族によって栽培されており、そのすぐき菜を漬けたのが始まりです。いつ頃から製造されたのかといったような詳しいことは定かではありませんが、すぐき菜がなかなか手に入らないものであったため、製造当初は広く出回るということはなかったようです。一説では、上賀茂神社の社家が賀茂川の河原にたまたま自生していたすぐき菜を持ち帰り、上賀茂神社内で栽培し始めたことがすぐき漬の起源とも言われています。江戸時代末期には上賀茂神社付近の農家で栽培されるようになりましたが、種が門外不出とされており、この地域でのみ食べられていました。したがって、長い間、発酵技術を含め、すぐき漬が上賀茂地区外に広がるということはありませんでした。
近年、すぐき漬からラブレ乳酸菌という乳酸菌が発見され、腸内の有用菌の活躍を助ける働きがあることで知られています。
3)しば漬
しば漬は、京都大原地区で古くから保存食として作られてきた、赤しその葉の漬物が起源だと考えられています。名前の由来は、平家滅亡後に大原に隠棲した建礼門院(平徳子)が、このしそを用いた漬物を気に入り、紫葉の漬物=「紫葉漬け」と名付けたということからきているともいわれています。しば漬は、まず夏野菜(なすやきゅうり)を薄く切り、塩としそを加えて樽につけこみます(荒漬)。この次に水分を除き、かさの減った野菜を同じようにつけた別の樽のものと合わせ、樽いっぱいに詰めて漬けこみます(二丁一丁)。漬ける工程は夏に行うので、気温が高く、自然と乳酸菌による乳酸発酵が進みます。また、野菜を隙間なく詰め込んで漬けるため、嫌気的な条件(酸素が少ない状態)になり、品質を低下させる菌の生育を防ぐ事ができます。乳酸が生成され、pHが下がると色合いのよいしば漬になります。
<調査協力>
株式会社西利
京都府下京区堀川通七条上ル西本願寺前
https://www.nishiri.co.jp/
京の上賀茂すぐき倶楽部
京都市農業協同組合 上賀茂支部
http://www.kyokamoyasai.jp
2.4. 乗原こんにゃく 前へ 次へ 目次
乗原こんにゃくは、丹後半島の依遅ヶ尾山北麓にある乗原地区の郷土食です。この地域は水はけが良いことから、昔からこんにゃく芋が栽培されており、こんにゃくの村として栄えました。一説には、源平の戦いで逃げた平氏がこんにゃく芋を栽培し始めたことが起源だと言われています。その後、大正時代から、地域の活性化を目的としたこんにゃくの製造が開始されました。
写真提供(上)和商店
こんにゃく芋は収穫できるまでに3年もかかります。毎年秋に、その年に製造するこんにゃくの原料となるこんにゃく芋を収穫します。こんにゃくの製造は年間を通して行われます。製造しているこんにゃくには2種類あり、四角い「乗原こんにゃく」は乗原産のこんにゃく芋を使用し、手練りやバタ練り機など昔ながらの製法で作ります。丸い「玉こんにゃく」は、乗原産のこんにゃく芋のほか、同じ京丹後市の大宮地区のものも使われます。上の写真はこんにゃくを作るときの機械です。
乗原産のこんにゃく芋は他地域産のこんにゃく芋と違い、マンナンが多く、粘りと香りが強いのが特徴です。また、手造りのため、こんにゃく内部に気泡がたくさんあり、料理において味が染みやすく美味しいです。生芋を使用しているので繊維が壊れておらず、弾力が強いのにサクサクとした食感です。
最近では乗原こんにゃくの新しい料理が多数考案されています。乗原の糸こんにゃくを使ったエスニックサラダや、にんじんと糸こんにゃくのたらこ炒め、平こんにゃくを使ったナスとこんにゃくの甘味噌炒めや、ひじきのこんにゃく煮などがあります。
写真(料理の写真)提供 和商店
(小柳)
<調査協力>
和商店
京都府京丹後市丹後町1714-2
2.5. ばら寿司 前へ 次へ 目次
ばら寿司は正月やお盆、親族の集まり、地域のお祭りなどで振る舞われる京丹後市の行事食です。ばら寿司は、押し寿司のように固めたりしていないので、食べるときにばらばらと落ちてしまいます。このことから、ばら寿司という名前がついたと言われています。
ばら寿司の具材として、鯖のそぼろは欠かせません。かつての京丹後市の漁港では鯖がとれたので、焼鯖を使用してそぼろを作っていました。しかし現在では漁獲量が減少しているため、ノルウェー産の鯖が原材料の鯖缶が使用されています。動物の肉も昔は高級品であったので使われておらず、鶏の卵を使用した錦糸卵が現在でも具材に入っています。その他グリーンピース、宮津かまぼこ、ごぼうなど様々な具材が入っています。また、筍や椎茸など、振る舞われる季節における旬の食材が具材として使われます。ご飯は酢飯ですが、酢の味はきつくなく、具材の味付けにより全体的にとても甘い料理です。
京丹後市は漁業が盛んで、かつては漁船が帰ってきた時にお祝いをすることが多かったそうです。また、地域のお祭りも多く開催されるので、めでたい料理であるばら寿司が行事食として定着していったと考えられています。
<調査協力>
京都府丹後広域振興局
京都府京丹後市峰山町丹波855
京丹後塾
3. 最後に 前へ 目次
突然の訪問にもかかわらず、私たちに心よくお話をしてくれた訪問先の皆様には心から感謝いたします。
参考資料
・黄桜株式会社HP kizakura.co.jp
・株式会社西利HP https://www.nishiri.co.jp
・京丹後市役所 京丹後市一般廃棄物処理基本計画
第2章 地域の概況 city.kyotango.lg.jp/…uments/keikaku02.pdf
・きょうと元気な地域づくり応援ファンド支援事業
平成22年度事例集 CASE 20 https://www.ki21.jp/fund/jireishu/pdf22/22jirei20.pdf