「微生物ゲノム×地域」で 食のブランディング

青森県の食文化

青森県(南部藩、弘前藩)の食文化

調査班:仲田、千葉  調査日:2017年3月13-14日

目次

1. 風土・歴史

2. 調査した郷土食

2.1. なんばんみそ
2.2. 南部玉みそ
2.3. すしこ
2.4. その他の食品

3. 最後に

1. 風土・歴史                    次へ 目次

青森県南部

風土

 田畑に囲まれた静かな地に、今回訪ねた『コムラ醸造(株)』さんは三戸郡五戸町(さんのへぐん ごのへまち)にありました。また、八戸市から約35キロに位置した三戸郡三戸町(さんのへぐん さんのへまち)の位置に『株式会社小野寺醸造元』さんはありました

コムラ醸造株式会社
株式会社 小野寺醸造元

 五戸町は、青森県の南東部に位置し、八戸市から西に約15.5kmの距離にあります。東には八戸市、西には新郷村、北には十和田市・六戸町・おいらせ町とそれぞれ接し、東西約20.7km、南北18.6kmにわたり広がるほぼ楕円形の形状です。

 自然豊かなこの町では、夏季にやませと呼ばれる冷湿な北東風が吹くことがあり、しばしば低温・長雨を伴い、農作物に影響を及ぼすことがあります。しかし、北東北に位置しながらも、年間を通して寒暖の差が比較的小さく、積雪が少ないなど穏やかな気候に恵まれています。今回訪ねた3月は、想像していたより雪が積もっているわけではなく、比較的暖かかったです。タクシーの運転手の方へ話を聞いたところ、10度を超えた暖かさは稀だということでした(2017年3月13日時点)。

 今回取材した食料のみそやお漬物に関して、発酵させるための気温調整がなかなか大変だという苦労を気候から感じ取ることができました。また、年間平均気温は9.9度で、東京の15.4度と比べると約6度低いことがわかります。涼しい気候の五戸町では、夏に獲れる野菜をもろみに漬け込み、保存食として冬場に食べていたそうです。

↓三戸駅での一枚です。

 

 

歴史

「広報ごのへまち」の記載によると、慶長4(1599)年頃から、五戸郷藩吏の木村秀清が新田開発を進めたおかげで、現在もなお、五戸には田んぼが残っているそうです。体力を使う田んぼでの作業に、濃い味つけのなんばんみそが、パワーの源として一役買っていたそうです。しかし現在は、健康志向の人が多くなってきたため、塩分を控えめに調節しています。

 一方、青森県庁 企画政策部 広報広聴課 広聴グループの資料によると、七戸町、三戸町などには城が建築され城下町として奥州街道の宿場町として、物資の往来も盛んだったとのことです。明治期以降は太平洋航路の拠点として八戸市が港として栄え、現在も国内有数の漁業基地となっているとのことでした。今回訪問した小野寺醸造元株式会社の代表、小野寺さんのお話によると、寒さも厳しく天災も多かったそうです。お米も非常に貴重な食料のため、お豆を主として生活するなど工夫があったとのことです。そこから、多くの人が祈りを捧げる文化があったと考えられます。

(仲田、千葉)

青森県西部

風土

 今回訪ねた『株式会社つがる女性加工』さんは、つがる市にあります。(写真元:Google)訪問した3月14日は、八戸市や五戸町よりもまだまだ雪が多く積もっていました。

株式会社つがる女性加工

 

つがる市は青森県の西北部、津軽平野の中央部から西に位置しています。日本海に面しており、海岸沿いには丘陵地帯が続いています。つがる市のホームページによると、南方には岩木山と世界遺産である白神山地、中心部には津軽平野が広がっており、そこでは津軽藩の時代に新田開拓が行われ、現在も穀倉地帯になっているそうです。

 また、市の土地の半分以上が農地に利用されている上、気候は、日本海の影響を受ける典型的な日本海型気候で、夏季は比較的冷涼で病害虫の発生が抑えられることから、稲作や夏秋野菜の作付けがさかんな地域となっているとの記載もありました。果物であれば、リンゴ・メロン・スイカが、野菜であれば、ネギ・ごぼう・トマト・ながいも・にんにくなどが主に栽培されています。そして青森県は、田んぼアートでニュースに取り上げられるなど稲作が盛んな土地ですが、中でもつがる市は県内一の米の生産面積を誇る、米の産地です。また、遮光器土偶(国重要文化財)が出土したことでも有名な歴史ある市です。

 今回訪問させていただいたつがる女性加工さんで作られているすしこには、キャベツ・きゅうり・しそ、そしてもち米が混ぜ合わせてあり、どれも地元の農家から買い取ったものを使用しているとのことでした。

 

歴史

 陸奥新報によると、もともとこの地方は湿地帯であったため、農業には向いていなかったそうです。しかし、江戸時代の初期から、年貢を得るために弘前藩(当時の藩主は津軽為信)が積極的に開墾に取り組み、大規模な新田開発が進められました。川をせき止めて水を確保したり、工事をしたりと、時間をかけた大変な努力のおかげで、米の収穫量は、20万石を超えたそうです。そうした歴史の名残で、現在のつがる市や五所川原市周辺は、新田地方という別名ももつとのことです。開墾された土地での農作業でも、大変な体力を使ったことでしょう。農作業時のスタミナをつけるために、程よい酸味のすしこは人々に好まれたことと思います。

(千葉、仲田)

2.1. なんばんみそ           前へ 次へ 目次

 なんばんみそを食べると、カリカリといい音がします。なんばんみそとは、地元で収穫された大根やごぼう、人参、シソの実に、赤や青の唐辛子をいれて、秘伝の調味液ともろみに漬け込んで作られる漬物です。みそ、という名前から、味噌汁に用いるような味噌を想像するかもしれません。しかし、なんばんみそは立派な漬物です。5ミリ角程度にカットされた野菜たちは、みずみずしくしっかりと野菜本来の食感を残しています。

 昔、青森県南部にある五戸地方では、もろみのことを「ごとみそ」、唐辛子のことを「なんばん」と呼んでいたことから、この名がついたという説があります。野菜が収穫できない冬季のために、秋季の野菜を保存し、冬期間の保存食として食されたのがなんばんみそのはじまりと言われています。かつては塩分が多めだったようですが、力仕事のパワーの源になっていたと考えられています。

 コムラ醸造さんでは、現在、甘口・辛口・山菜入りの三種類のなんばんみそをつくっています。お話を伺った際に、お土産として甘口と辛口のなんばんみそをいただきました。帰宅後に早速いただきましたが、白いごはんがあっという間になくなってしまいました。また、おすすめの食べ方も紹介していただきましたが、やはり温かい白飯との組み合わせが一番のオススメだそうです。なかでも印象的な一つをご紹介します。なんばんみそに、しょうゆとサラダ油とごま油をまぜると、サラダに合う和風味のドレッシングになるそうです。みなさんも試してみてはいかがでしょうか?

 関東では、なんばんみそと似た味の漬物にはなかなか出会えなさそうです。また青森県に行くときには必ず買おうと思います。ちなみに、青森駅内や土産物店には、ほぼどの店にも「コムラのなんばんみそ」が陳列されていました。青森県の特産品としても名高いことがうかがえます。

(千葉、仲田)

コムラ醸造株式会社

<調査協力>

コムラ醸造株式会社
青森県三戸郡五戸町銀杏木13-5
http://www.komurajouzou.com/haik/

 

 

 

2.2. 南部玉みそ            前へ 次へ 目次

 南部玉みそとは、大豆を煮て玉にし、軒下に吊るして空中の酸素を利用して塩水と合わせてつくったものです。湿気のあるところに菌が集まるしくみを利用し、昔ながらの製法で受け継がれてきた製法とのことでした。

 今回訪問した『株式会社小野寺醸造元』さんの代表小野寺さんも自慢の一品となっています。飢餓のあった昔の東北では辛口のみそが昔ながらの味だったそうです(小野寺昭夫代表インタビューより)。現在は食べ物も豊富になりました。そのため、若い人を中心として甘いものを好むため、辛口ようりも甘口の方がポピュラーになりつつあるとのことです。しかし、年配の方など昔の味をよく知る方々はやはり辛口が一番ご飯に合うと言い、好んでいるそうです。

 

↑小野寺醸造元株式会社の表玄関からの写真です。写っているのが代表の小野寺昭夫さんです。

 

工場の入り口近辺のものです。工場に入るとすぐに仕込みの材料が置いてあり、みそ独特の香りがいっぱいに広がっていました。「味噌玉はうちでもオススメの一品です。じっくりと仕上げるため、時間もかかりますがそれほど深い味になっています。(小野寺昭夫代表)」

工場入り口付近の写真です。右の壁面には南部玉みその製法や、その他の食品の製法に関する資料が貼ってありました。工場奥の方では工場の方が忙しそうにしていました。

仲田、千葉

株式会社 小野寺醸造元

<調査協力>

株式会社 小野寺醸造元
青森県三戸郡三戸町在府小路町39
http://marusyou.jp/

2.3. すしこ            前へ 次へ 目次

 すしこ、という名を聞いて、どんな食べ物を想像するでしょうか?お寿司?へしこ?魚卵?実は、お漬物です。しそ由来の鮮やかなピンク色とキャベツときゅうりの緑色が目を惹きます。さらに、すしこはもち米を使っています。お米と野菜を漬け込むことで発酵します。本来、ご飯のおかずとなる漬物が、米を含んでいることに大変驚きました。

 つがる市の工場ですしこを作られている竹内さんにお話を伺う際に、すしことその他さまざまなお漬物をふるまっていただきました。すしこは、ピンポン玉サイズに小さく丸めてあり、口に入れると、粘りと甘みと酸味と野菜の食感が一度に味わえました。味も食感も初めてで、感動しました。

 

すしこは、農期のスタミナをつけるために作られた、という説があります。確かに、程よい酸味で元気になれそうでした。また、発酵食品であるすしこを食べると長生きできる、とも言われているようです。すしこが盛んに食べられているつがる市の出野里地区というところでは、長寿の方が多いと伺いました。

↑つがる女性加工で扱うさまざまな漬物。(写真提供:つがる女性加工)

 

↑大根の醤油漬け・赤かぶの酢漬け・かぼちゃとウコンで色付けしたたくあん・七福神漬け・鮭の飯寿し・しそ巻きりんご・すしこの順で詰められています。

 お伺いした「つがる女性加工」の工場は、元給食センターだった建物を改装しており、大きな機械等はなく、漬物づくりのほとんどがスタッフの方の手作業だそうです。

(写真提供:つがる女性加工)

↑テレビ出演時の写真や、今まで受賞してきた賞状などが飾られていました。

↑インタビューの様子。すしこのほか、お漬物といなりずしもふるまっていただきました。

↑工場前にて。竹内さん(左から二番目)と調査班で撮影していただきました。

千葉、仲田

株式会社つがる女性加工

<調査協力>

株式会社つがる女性加工
青森県つがる市木造森内1-2

2.4. その他の食品           前へ 次へ 目次

夕飯や、インタビュー中に伺った際に出会った食品です。

三升漬

↑この地方の伝統食「麹南蛮」を醗酵させたタレです。これも小野寺さん自慢の一品のひとつとのことです。辛さはあるもののとても食べやすくご飯がどんどん進みそうな一品です。

↑これらは小野寺醸造元さんが開発中の製品たちです。一番左にあるものは酵素を粉末状にすることに成功し、なんにでもかけられるようにしたものだそうです、紹介した三升漬(左から二番目)、にんにくを入れて香り豊かに仕上げたみそ(左から三番目)、あっさり見えるがしっかりとした味の白しょうゆ(一番右)です。

せんべい汁

 南部煎餅の中でもせんべい汁の具にすることを前提に焼き上げた「かやき煎餅(おつゆ煎餅・鍋用煎餅)」を使用したもののことです。しょうゆベースになっておりあっさりとしていました。普段食べるせんべいとは異なり、もちっとした食感が特徴的でした。そのため一杯でもとてもお腹が満たされる一品でした。具材にはきのこ、ごぼう、人参などの冬の食材が入っていました。青森の新幹線の駅ではお土産用としてインスタントカップものやパックになったものも販売されていました。

桜鍋(馬肉鍋)

 これは、馬のお肉をいれたお鍋です。青森県庁企画グループ調査結果によると人と馬とが共存共栄してきた、馬産地五戸町では、明治の時代から「馬肉鍋」が食べられてきたそうです。馬肉料理は、「低カロリー」「高たんぱく」「低脂肪」で、栄養のバランスのとれた郷土料理とのことです。お肉の臭みはほとんどなく非常に食べやすかったです。柔らかく汁の味が染みました。お土産セットもありました。

いちご煮

青森県八戸市とその周辺の三陸海岸の伝統的な料理です。ウニとアワビの吸物のことです。今回訪問したコムラ醸造元の工場の方にお話を伺ったところ、なぜいちご煮という名前がついたのかというと、淡い乳白色の潮汁に沈む赤みの強いウニの卵巣を朝もやの中の野いちごのように見えるということが由来と言われているそうです。磯の香りが上品で、見た目とは異なり深い味わいでした。普段は滅多に食べることができない高級なお吸い物ということもあり、お祝い行事で食べるとのことです。お土産として缶詰やパックになって販売されていました。

りんご酒

夕飯を食べた「ゑびす屋」さんではりんごを使ったお酒を頂きました。りんご酒は青森県産のりんごを使ったお酒で甘みがあり女性には飲みやすかったです。

(仲田、千葉)

3. 最後に                      前へ     目次

 実際に青森県に訪問し、その気候や味を体感することができました。気候にあった「保存」という観点や寒さにまけない「エネルギーを出すため」の意味が郷土料理に詰まっていました。その郷土料理の味を受け継ぐ工場の皆さんの熱い思いが感じられました。また、どの訪問先でも、伝統を守りつつも、現代の健康志向や安全基準を満たさなければならない大変さがひしひしと伝わってきました。伝統を守るためには、守りたいその商品だけを販売するのではなく、様々な分野の商品開発や提携、契約、取り組みが欠かせないということがわかりました。先祖代々から受け継がれてきた人々の工夫と、地元への愛が生む素敵な食文化に触れる、貴重な体験となりました。この記事を機に、より多くの人にこの食文化を伝える一助になれれば幸いです。

味噌玉とその他多くの商品について沢山のご説明をしてくださった、小野寺醸造元 小野寺昭夫様、なんばんみそについてや、それを守るためになさっていることをお話してくださった、コムラ醸造(株) 小村卓至様、小村由美様、すしこの今と昔、そして様々な漬物等をご紹介してくださった、つがる女性加工 竹内きよゑ様、竹内様をご紹介してくださった、つがる市役所 齊藤理佐様、渡邊照秀様、稲場慎也様、道中お話を聞かせてくださったタクシーの運転手さん、飲食店の方、みなさん温かい方ばかりでした。

青森県の皆様、多大なご協力、本当にありがとうございました。

(千葉、仲田)

 

参考資料

・五戸町勢要覧(http://www.town.gonohe.aomori.jp/chosei/yoran_01.pdf)
・CLIMATE-DATE.ORG(https://ja.climate-data.org/location/50713/)
東京管区気象台ホームページ(http://www.jma-net.go.jp/tokyo/sub_index/tokyo/kikou/tokyo_kiko.html)
・広報ごのへまち(http://www.town.gonohe.aomori.jp/kouhou/2003/200401_no.535.pdf)
・つがる市ホームページ(http://www.city.tsugaru.aomori.jp/index.html)
・陸奥新報2014年9月8日(http://www.mutusinpou.co.jp/%e6%b4%a5%e8%bb%bd%e3%81%ae%e8%a1%97%e3%81%a8%e9%a2%a8%e6%99%af/2014/09/32974.html)
・つがる市の「おいしいものできました。」(http://www.tsugaru-oisii.com/?mode=f2)
青森県庁ホームページ 企画政策部 広報広聴課 広聴資料(http://www.pref.aomori.lg.jp/k-kensei/sugata.html)
・いちご煮 – にっぽんの郷土料理観光事典

 

食文化調査結果一覧に戻る

PAGETOP
Copyright © ぐるなび 食の価値創成共同研究講座 All Rights Reserved.
Powered by WordPress & BizVektor Theme by Vektor,Inc. technology.